離婚時の慰謝料、財産分与、婚姻費用分担義務

とある夫婦が離婚しようとしています。
モデルケースとして離婚時のお金の動きを単純化して見てみたいと思います。
モデル家族
夫38歳、会社員、年収800万円
妻36歳、専業主婦
住居は郊外の戸建(夫名義・ローン残25年)
金融資産600万円
婚姻期間10年
子供1人(8歳)
離婚事由は、妻の一方的な浮気(他意はありません、仮定です)
妻「悪いとは思うけれど、旦那は仕事ばかりで、家庭を顧みなかった」
夫「家族のために働いているのに酷い仕打ちだ」
協議離婚の場合
協議離婚の場合、両者の合意があればお金のやり取りはしないこともできます。現実的には子供がいるので、養育費の支払いの取り決めは最低限すべきでしょう。今回のように妻の浮気でも、親権を夫が取れるかというと絶対ではありません。親権は離婚届の記載事項ですので、必ず決める必要があります。理想は取り決めを文書にして、更にそれを離婚協議書として公正証書を作成することですが、なかなかそこまできちんとできる夫婦はいないようです。
調停・審判・裁判離婚の場合
裁判所での離婚の場合(調停、審判、裁判)、やり取りするお金としては3種類あります。養育費は取り決めであってその場でやり取りするものではないため、別枠です。今回は平均的な裁判離婚期間として一年半を想定します。
①慰謝料
どちらかの有責離婚の場合に定められます。ただし、日本の裁判の場合、殆どが100~300万円ほどです。芸能人の離婚報道などで慰謝料何億円云々というときには下記の②と③を含めた金額であることが多いので注意が必要です。
②財産分与
今回の場合、妻は専業主婦で収入がないため、結婚してから貯めた預貯金等全ての資産の約2分の1が財産分与額です。夫は会社員のため、収入は給与だけです。金融資産が600万円ですので、2分の1の300万円が財産分与です。なお、住宅ローンがありますので、それも財産分与の対象ですが、不動産の価値がいくらか等にもよってきますのでここでは割愛します。
③婚姻費用分担義務
婚姻中の夫婦は同程度の生活レベルを維持しなければならない、という平等主義の下、課される義務がこの婚姻費用分担義務です。裁判所は「養育費・婚姻費用算定表」という表を使い、ほとんど機械的に婚姻費用を決めてくれます。これが曲者です。婚姻費用分担義務は別居していても発生します。本ケースでは、夫は妻に対し、月々14~16万円を、裁判中もずっと支払わないといけないことになります。裁判が2年かかったとすると、それだけで15万円×36か月=540万円です。
まとめ
②300万円+③540万円-①200万円=640万円を夫は妻に支払い、離婚することになります。はい、既に金融資産の残高を超えています。更に養育費も月々支払っていく必要があります。浮気したのは妻なのに、貯金の大半を持っていかれ、おそらく親権も持っていかれ、養育費は払う、という恐ろしいですが、実際に十分に起こりうるシミュレーションです。実際は、このような状態になることを避けるため、途中で和解に至ることが大半です。
離婚する際はよくよく考え、可能なら専門家に相談してからすることをお勧めします。なお、当センターでは離婚の相談も承っておりますので、お気軽にどうぞ。